進路選択の振り返り(研修医→専攻医)

研修医→専攻医へ上がる時に考えていた事について、現状と併せて個人的に振り返る。

 

■診療科について

専攻は小児科を選択した。これについては今振り返っても後悔なく、3年前に返っても同じ進路を辿ると思う。

元々内科系研修医として現施設に入職したが、入職して半年間で回った科で特にこれ、という科がなく、何となく鬱の状態だった。

そんな中、救急外来で外傷は小児患者も診る為、対応していく内に、何となく

・他の研修医に比べて子どもの泣き声が苦にならない

・自分より年上の患者と接するのと比べ、子どもの頃の記憶はなんとなくある為、どう接して欲しいのかを想像しやすい

という意味で、小児科への適性を感じていた。

1年目の12月に小児科を回った時に、選択するならこの科だと思い、科を決めた。同時期に小児科の救外を診ている時に、(小児科志望だと言わない状態で言われた)「小児科似合うね!」という先輩からの一言も背中を押した。

選択肢に入るまでは苦悶が続いたが、決まってしまえばあっさりと他の選択肢に目が向く事はなかった。

 

■病院について

①現施設に残る ②他の市中病院に行く ③他の子ども病院に行く ④医局に属する

の4パターンが考えられた。

専門医を取るタイミングで臨床以外の業務をしてみたい、とうっすらと考えていた為、④の選択肢は外れた。(科の選択でも麻酔科が一時期選択肢に入ったが同様の理由で消えた)また③についても給与の低さと再度種々の科をローテする事になる為進路を方方で語る事への億劫さから積極的な選択肢とはならなかった。

②については大学の親しい先輩が専攻医として働いていた、隣の区の市中病院(700床程度)が選択肢に入った。見学にお邪魔した時はレベルの高さを垣間見た一方、外勤ができない事やブラックさへの懸念も残った(結果として紹介してもらった先輩も自分が専攻医となる前に退職に至った)

①については給与面が担保できる事、外勤がある事、気心しれた研修医同期が他の診療科にいる事の安心感から第一選択となった。最終的に①が8月中旬とかなり序盤に決まった為進路選択に至った。

 

■当時考えていたメリット、デメリットと専攻医を終えての振り返り

現施設に残るメリット、デメリットとして、当時以下を考えた。

メリット→給与面が良い、外勤先がある、気心しれた研修医同期がいて安心、スタッフの雰囲気がわかり安心、施設の移動に伴うシステムの違いでストレスを感じずに済む、同じ場所に定住できる、卒業後の進路への介入の低さ

デメリット→同じ施設に居続ける事による滞留感、PICUや小児外科適応例の経験不足

 

振り返ると、以下の様に感じる。

メリット

・給与面が良い→後で確認しても、小児病院や大学病院と比べて基本給で20万円程度高く、外勤先での給与と合わせるとさらに上幅があった。36協定に沿っていれば時間外も問題なくつけれた。一方、当直は月6回と多く、当直分の外勤ができない事や当直での業務を含めて見た目上の給与が高く見えてしまっているのではと考えると、(臨床以外の職種を含め)より負担の少ない中で同程度の給与をもらえるポジションはあるのでは?という考えに至った。

・外勤先がある→乳幼児健診やワクチン、開業医での一次診療など幅広く経験できて、都会・地方関係なく働ける場所の選択肢が増えた。給与面でもプラスに働いた。一方、平日の日中の時間が終わってからの外勤や当直は、実質時間外に行っているので、見た目上の給与が良くても実際はそれなりに拘束されている、という状態でもあった。

・気心しれた研修医同期がいて安心→専攻医特有のストレスが溜まった際に、気心知れた友人が近くにいる事はとても助かった。

・スタッフの雰囲気がわかり安心→スタッフ全体の雰囲気は変わらず、仕事に支障が出る程のストレスは感じずに専攻医期間を終えられた(否、専攻医特有のストレスはそれなりに感じていたが家族・友人に恵まれて内に溜め込まずに済んでいた)ただ同じ職場の年次が近い先輩の中にはメンタルを病む人もいた為、業務負担に関する感じ方は人それぞれかもしれない。若手としてはケアされているという感覚を感じるのが大切で、その為にはメンター制度の導入や数ヶ月毎の振り返り制度の導入もした方が若手のストレスは減るだろう(病院の様な特殊な環境でなければ普通なのかもしれないが)

・施設の移動に伴うシステムの違いでストレスを感じずに済む→研修3年目(医者5年目)の秋に3ヶ月間の外部研修を経験した際、1〜2ヶ月程度でシステムの違いは慣れると感じた。当初懸念していた程には考えなくてよかったと思う。

・同じ場所に定住できる→妻が医局人事で東京周辺の都道府県も多い為、自分も医局に属し片方:埼玉、片方:神奈川 の様になっていたら大変だったかもしれない。片方の職場が一定期間固定されている事はメリットであった。引っ越しをせず結果として家の購入等も視野に入れやすくなった為、経済的に貢献した。

・卒業後の進路への介入の低さ→1ヶ月等短い時間でのローテ時、今後の進路に言及される事の面倒さを犇犇と感じていた(特にポリクリ時の大学関連の病院を受けないのか的な雰囲気や、研修医時代の大学の医局に戻らないのか的な雑談にはうんざりしていた) 行政との関わりも深い現施設では卒業後の進路選択に比較的寛容で、ストレスを感じずに済むのではと感じ、実際小児病院と比べても寛容であったかと思う。(医局に属していた場合さらに不寛容であったかと予想するが、実情はわからない。東大の小児科は比較的寛容という噂は聞いたが)

デメリット

・同じ施設に居続ける事による滞留感、PICUや小児外科適応例の経験不足

→滞留感については専攻医2年目の春に内科系の同期が外部研修に行った時に初めて感じた(同時期に転入してきた泌尿器科の高校同期にも同時期に「飽きない?」と聞かれたがその時は飽きたと答えた)。一方外部研修を3年目に小児病院でPICU含め行えた事で、上記についてはある程度改善できた様に感じる。

 

以上振り返ると、概ねメリットを享受した上でデメリットをカバーでき、専門医を取るというゴールへの障壁の低さを考えると、かなり良い選択肢だったのではないかと感じる。